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テレビ先生・パソコン先生・学外先生 -授業スタイルの改革のヒントとして-

1.はじめに

 日本では黒板とチョークによる、一人の先生が40人近い子どもたちを一斉形式で教えるという授業のスタイルが定着し、教室の設計からしてもそれに応じた形にできあがっている。そのためか、ICTを活用した授業において先生自身からも、それを前提にした授業スタイルの発想しか生まれてこない現状があると感じている。
 例えば、ICTを活用した教育で、一斉学習におけるプレゼンテーションツールやシミュレーションなど黒板の代わりの提示手段として、また、コンピュータ室においても調べ学習などの検索型の授業などの活用例が多く報告されている。
 小学校では、壁を取り払った教室やオープンスペースなど、従来のハーモニカ型の教室設計から脱却した試みもあり、中高等学校に比べると一斉学習の授業スタイルをこえた試みもあるが、基本は従来の授業スタイルの域を出ていない。
 ICTを活用した教育を推進する場合も、どうしても現状の授業を改善するという狭い範囲で考えてしまいがちである。ICTの優れた部分を十分に生かすためには、従来の一斉形式の授業スタイルから脱却した新しい発想が必要である。

2.テレビ先生の活用

 視聴覚教育で放送番組を子どもに視聴させる場合、子どもたちはテレビ先生と教室先生を上手に区別できる。教室先生に「テレビ先生がこう言っていた。」などと発言する。放送番組を見ているときは教室に2人の先生がいることになる。
 テレビ先生をもっと上手に利用するには、例えばクラスを二つのグループに分け、半分はテレビ先生に任せて、教室先生は残りの半分の子どもたちにきめ細かい授業を直接ができないだろうか。人数が少ない方が効果的な授業ができる場合が多い。そして、放送番組が終わればグループを入れ替えればよい。テレビ先生が活躍している時間は、子どもと一緒にテレビを見るのではなく、教室先生は別の役割を担えばいいわけである。
 3つのグループに分けて、テレビ先生と子どもたちによる自己学習、教室先生の直接授業で構成することもできる。自己学習では例えば定着をはかるためのドリルをさせる方法もある。授業科目の内容に応じていろんな工夫が可能である。
 一人の先生が同時にクラス全員に同じことをさせる必要はないのに、どうしても一斉学習の発想が頭のどこかに染みついてしまっているのではないだろうか。時間差を上手に使うと、新しい授業スタイルは考え方次第で生まれてくる。

3.パソコン先生

 教室ではプロジェクターを用いてプレゼンテーションツールによる授業がよく行われるようになった。教材作成の準備には工夫と時間がかかるが、あらゆるメディアを統合して表示できるし、工夫した提示ができる。すぐに使える環境があれば優れものである。
 ただ、黒板とチョークの変わりに従来の授業をプロジェクターで行っても子どもたちにとって最初は新鮮に感じるかもしれないが効果は長続きしない。かえって黒板のほうが、先生の動きやチョークで書く音など、臨場感がある場合もある。ICTの活用で一番大切なことは、考えさせる授業、知識の伝達のみでなく、学びのプロセスのある授業に有効である。
 しかし、このような一斉学習の補助的な役割のみをICTに求めるのではなく、パソコン先生というのは言い過ぎかもしれないが、パソコンを先生の助手として活用することも十分できる。教室にコンピュータがあれば、コンピュータを助手としてグループ学習や習熟度に応じた学習など様々な授業スタイルが展開できる。
 テレビ先生の場合と同じように、グループ化することで、パソコンの台数はクラスの人数分の台数はいらない。プロジェクターがあればパソコンは一台でもいい。操作は子どもたちに任せればよい。パソコンでは様々なマルチメディア教材が活用できる。オープンスペースがある小学校などでは実施しやすいが、教室などでも机を移動させたりして工夫すれば可能である。

4.学外先生

 昔から学校には、多くの先生と子どもたちが集まる場所であったにもかかわらず電話が数本しかなく、陸の孤島であった。インターネットが繋がらなかった時代でも、各教室に電話があれば声だけでもいろんな情報の交換が学校外と可能だったにもかかわらず、離れた学校のクラスと交流をするという発想はなかった。まさに壁のある学校で、生徒指導上のこともあったりして、あえて外部との情報の交換を否定していた時代でもあった。
 このような状況であった学校に一足飛びにインターネットが接続され、教室から世界の情報が検索でき、情報も発信できるようになった。学校間のテレビ会議も簡単にできるようになった。
 情報が手軽に入手できるようになったことで、教育内容も知識中心の学習から、考える力や得た知識を応用する力、創造力を育成する学習へかわってきた。
 インターネットは一方的に情報を得るのみの手段ではない。双方向のコミュニケーションの道具として大きな威力を発揮する。単にインターネットを情報検索の道具として使うだけでなく、コミュニケーションの道具として、学校間や学校と大学・企業などとテレビ会議による交流や学外授業、大学などと連携してe-Learningの遠隔授業を子どもたちに体験させてほしい。そして、学外先生をどんどん教室に招いてほしい。
 さらに思い切って、離れた2つのクラスがネット上で一つになって合併し、子どもたちも2人の先生を得て、授業を展開できればなどと夢はふくらんでくる。

5.おわりに

 ICTの活用方法で一斉授業を補助することが悪いというのではない。いろんなところでの活用を試みてほしいと思っている。また、難しく考えないで、とにかく使い始めることを勧める。使いながら問題点やより効果的な使い方を模索すればよいのである。
 だが、一斉授業の発想のみでICTを考えないで、自由な発想で新しい授業スタイルを創造してほしいというのが私の言いたい趣旨である。新しい授業スタイルが生み出される中で、学校の設計図も変化していくことを期待している。日本の授業スタイルが変わらないと、情報社会に対応できず、社会からも家庭からも見向きもされなくなってしまう心配をしている。
おそらく、今の先生が子どもであった時代に、ICTを活用した新しいスタイルの授業が当然のように行われていたら、そしてそれが楽しく理解しやすいと感じておれば、今のチョークと黒板だけの一斉授業は、もはや存在しなかったであろう。
 今、新しい授業スタイルの創造ができれば、新しい方法で学んだ子どもたちの中から先生になる新米先生は、きっと自分が経験してよかった方法については、そのまま継続していくであろう。次の先生を育てる意味でもこの新しいことに挑戦することが重要だと思う。




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